富久紗を掛軸飾りに 袱紗 ふくさ
「富久紗(袱紗・ふくさ)」といえば?
茶道に使うアレや、金封を包むときのアレなど、小さめの絹布のを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
茶道で用いられる袱紗は「帛紗」と書き、金封を持参する際に使うのは「包み袱紗」、包み袱紗の簡易版の「はさみ袱紗」(一枚の布ではなく予め財布のような袋状になっている袱紗)、などふくさには色々あります。
今回ご紹介するのは、上の写真の「掛け袱紗」についてのお話です。
掛け袱紗とは、御祝を持参する際に、塵除けのために目録やお祝いの品などの贈答品の上に掛ける絹布のことです。
つづれ織りか塩瀬のいずれかで、大きさは様々ですが、特に広蓋用のものは、広蓋・掛け袱紗・中包み・家紋風呂敷の一式で、親戚やご近所にご挨拶に周る際に欠かせないものとして、嫁入り道具にご用意されることが多いものでした。広蓋に贈答品を乗せ、広蓋ほどの大きさの袱紗を掛け、それらを中包みの風呂敷で包み、さらに家紋入りの白山紬の風呂敷で包んだ状態で持参するというものです。
ご自宅にある掛け袱紗を、何かしら飾ることのできるものに作り変えられませんか?というご依頼をいただきました。
もう掛け袱紗として使用することはなく、しかしながら、嫁入り道具として揃えてもらった袱紗をそのまま箱の中に仕舞っておくだけではなんだかさみしいので、みんなの目に触れることのできる飾りにしたいというご希望でした。
仕舞う際によりコンパクトにできるようにとのご希望もあり、掛軸飾りをご提案させていただきました。上下に別布を組み合わせた掛軸飾りです。つづれ織りの袱紗に対しハリのある正絹の袴地を上下に配し、床の間にもしっくりとなじみます。
袱紗の四隅の亀房を利用し、風鎮替わりの飾りもお作りしました。
昨今は婚礼の事情も多様化し、親戚やご近所にご挨拶に周ることも簡略化されたり、「嫁入り道具」という言葉すら耳にすることが少なくなったように感じます。
何か形にして残すことで、次世代にもこういった風習があることが伝わっていくとよいですね。
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