【別誂え 加賀友禅 花嫁のれん】

2013年
石川県 小林 瞳 様 (旧姓 宮本)

御名:「汐風」
製作:意匠 凛

日本舞踊「汐汲(しおくみ)」の名場面の須磨の浜を千里浜に置き換え17歳の名取襲名時の新婦・瞳様をお写真より忠実に表しました。

加賀友禅 花嫁のれん4-1

加賀友禅 花嫁のれん4-2

加賀友禅 花嫁のれん4-3

「汐汲(しおくみ)」について
年代 文政八年
作曲 二世 杵屋正次郎
作詞 桜田春治助

☆汐汲は、能の「松風」がベースとなっている曲

〈ストーリー〉
平安朝時代、都の在原行平はある咎で須磨の芦の屋に流される。
そこで、汐汲み女の松風・村雨という二人の姉妹に出会う。(松風が姉)
二人は行平の世話をするようになり、そして恋物語に。
三年の月日が経ち行平は罪を許され、都に帰る事になる。
行平は二人が浜に出ている間に、出会いの浜辺にある松の枝に形見の品として、烏帽子と狩衣を掛け姿を消す。
二人の姉妹は、また何時か行平に会えると信じて過ごすが、風の便りに、都で行平が亡くなったという事を知り、形見となった二品を眺めつつ儚く生涯を終えた。
そして、それから長い年月が経ったある日。旅の僧がこの浜辺を通りかかり、そこで二人の汐汲み女に出会います。
二人は僧に「我々は松風、村雨と申して、この世の者ではありません」と僧に明かし始める。
二人は死しても恋の未練によってこの世に留まり続けていたのだった。是非、僧の回向(えこう)によって妄執を払い、我々の苦痛を取り除いてくれと頼みました。
松風は形見の烏帽子と狩衣を身にまとい、行平を求め舞いはじめました。
そして、時は経ち朝日が上りはじめると、僧の目の前から二人の姿は消えたという。

この度の花嫁のれんでは下記のようにストーリーを付け加えました。
〇さらに月日が流れた後年、行平の住まい(寝殿造り、舞い場は釣殿に設定)に再び松風が幻影として現れ、あの日と同じように夜通し舞い、終には行平の邸宅に残る幻影と結ばれ、今度こそ無事成仏する・・・という場面をのれんに表現しました。

☆のれん上では「須磨の浜」を「千里浜」に置き換えました。
☆左右の浜木綿(ハマユウ)は新婦様誕生日の8月7日にちなんで
☆舞台背景の雄松は「衣掛けの松」…現在も須磨に古株のみ残るという
☆左上の幕は「宴幕」、境の道長取りは平安時代に掛けて