別誂え加賀友禅振袖をご紹介いたします

別誂え加賀友禅振袖　『青藍地雲錦祝歌図』（せいらんじうんきんいわいうたのず）

お正月が過ぎますと成人の日。
晴れやかな成人の日を彩る振袖の別注を賜り、
昨年の成人式を迎えられたお喜びのお声を頂戴しておりましたのでこの機会にご紹介させていただきます。

最初のご来店の頃から丸２年をかけて、じっくりとご相談や経過のご確認の機会を重ね完成いたしました。

一番初めのお打合わせの際にコンセプトについてご相談いたしましたところ、
ご本人様のご趣味が「百人一首」であるとのお話から、お好きな短歌の情景を模様にするというテーマとなりました。

成人のお祝い着に相応しく、大人っぽさや礼装感を表現しながらも、
可愛らしく、また、別誂えならではの遊び心のあるデザインとなるようにご相談を重ねました。

選定していただいた三首がこちらです。

◯　『久かたの　光のどけき　春の日に

しづ心なく　花の散るらむ』　（紀友則）　・・・春

◯　『ちはやぶる　神代(かみよ)もきかず　竜田川

からくれなゐに　水くくるとは』　（在原業平）　・・・秋

◯　『かささぎの　渡せる橋に　おく霜の

白きを見れば　夜ぞ更けにける』　（中納言家持）　・・・夏と冬

三首から四季を読み取り、成人式後も様々なお祝いの席にお召しいただけるよう
四季の流れと縁起の良いモチーフで構成するストーリーをご提案させていただきました。
桜、紅葉、雪輪のそれぞれを大きく描き、それらのシルエットの中に四季がうつろいます。

桜が「散ら」ないように、大きな桜で囲まれた中に繊細な桜の花が舞う様子としました。
紅葉の名所として知られる竜田川は、川の流れに紅葉が寄り添う様子そのものを「竜田川文様」といい、
古くから友禅の柄に用いられてきました。
満開の桜と色付く紅葉＝「雲錦」は、日本人ならではの美しい風情があふれます。
三首目の歌からは、天の川の逸話と冬の夜空を描きました。

深みのあるブルーの地色に、天よりの星々が地上に集まり煌めき、やがて豊かな川となる幻想の風景です。
四季と巡る歳月の意味を込め、順風の未来を祈念しております。

別誂えらしく華やかで大胆な構図の中にも、
虫喰いやぼかしといった加賀友禅ならではの技法で細部を繊細に表現しています。
また、一部の地色には奥行きを見せるため蒔き糊の技法も用いています。